オオクワの飼育方法
手抜きでBIGなオオクワなんて期待できない飼育方法です。
幼虫をマット(広葉樹のおが屑)で飼育する方法を書いています。
概要
- オオクワの一生と飼育(地域によって時期は前後すると思いますが参考にしてください。)
- 6月中旬
- 卵が生まれます。
- 7月上旬
- 孵化しケースの壁面や底に幼虫の姿を見かけることがあります。
- 8月上旬〜
- 産卵セットから幼虫を取出し、個別飼育します。
- 9月中旬〜10月下旬
- ケースの状況を見て糞が多くなったら餌を交換します。
- 3月下旬
- マットが劣化しているので羽化に備えて交換します。
- 5月下旬〜
- 幼虫は黄色っぽくなり蛹になります。羽化するまでケースを動かさないようにしましょう。
- 6月下旬〜
- 羽化を始めます。羽化してもしばらくはそのままにしておきます。
- 7月中旬
- 羽化して2〜4週間で掘り出します。繁殖が出来るのは来年からですので単独飼育します。11月下旬まで最低でも週一回は餌交換とマットの加水をしましょう。
- 11月下旬
- 越冬の準備をします。この頃から餌は不要です。
- 12月〜3月
- 一ヶ月に一回程度マットの状態を確認し、乾燥しすぎているなら水を加えます。
- 3月下旬
- 冬眠が終わり成虫が活動し始めます。飼育セットを夏用にします。
- 5月下旬
- 産卵セットを作り、個別飼育していた成虫をペアリングします。
- 6月中旬
- 交尾し産卵を始めます。
- 9月上旬
- 涼しくなり産卵しなくなります。
- 11月下旬
- 越冬の準備をします。この頃から餌は不要です。来年も元気かな?
成虫編
- 飼育用品
- 飼育容器
- 通気性や観察のしやすさを考えると、ホームセンター等のペットコーナーに売っているプラスティック製の飼育ケースがお薦めです。単独飼育ならミニサイズでも大丈夫ですが、ペアで繁殖を目指すなら大サイズの方が良いでしょう。虫かごでは長生きさせるのが難しいと思います。
- マット
- マットとは飼育ケースに入れる床材の事で、おが屑を使います。昆虫用マットはペットコーナーで入手できます。
- えさ
- 本当かどうかは判りませんが、水分が多い果物や砂糖水は虫が下痢をして弱るそうです。私は入手が容易で餌交換が簡単なペットコーナーに売っている昆虫用ゼリーを使っています。人間用のお菓子のゼリーが安いですが、虫に食べさせると口のブラシが硬くなる事があるようです。ゼリーは蓋を取らず、カッターナイフで蓋を十字に切って与えると手間が掛からず簡単です。
- キッチンペーパー
- 虫を飼育していると、マットやゼリーに小蝿が来ますので、大判のキッチンペーパーを蓋とケースの間に挿み、小蝿の侵入を防ぎます。キッチンペーパーの通気性が悪いと蒸れますので注意してください。私は蒸れるので真夏には使っていません。
- 造花の葉
- 転倒した虫が起き上がるための足場として100円ショップで買ってきた造花の葉を切り取って入れています。
- 産卵木
- オオクワはきのこが生え軟らかくなったような広葉樹へ産卵するそうです。椎茸を栽培した後のホダ木を適当な長さに切った物を「産卵木」として市販しており、ペットコーナ等で簡単に入手できます。椎茸の菌糸で軟らかくなり芯が少ない物が良いそうです。以前通販で太目の産卵木を注文したら硬い節の部分ばかりだった事があります。専門店やホームセンターで実物を見て買われる事をお薦めします。
- ビニール袋
- 冬眠させる時にマットの乾燥を防ぐため、小さな穴をいくつか開けたビニール袋を蓋とケースの間に挿みます。
- 飼育方法
- 入手
- 天然のオオクワを捕まえるのはかなり困難だそうです。ペットショップなどでも見かけますが結構よい値段が付いていますので、私はインターネットのオークションを利用してます。上手く落札すれば一匹千円程度で入手できます。オオクワは羽化して成熟するまで時間がかかりますので、すぐに繁殖させたい時は半年以上前に羽化した成虫を入手しましょう。
- ケースのセット
- 単独飼育の時
- 繁殖させない時は一匹で飼育しましょう。べチャべチャにならない程度の少量の水と混ぜたマットをケースの底に3センチ程入れ、マットの上に餌と造花の葉を置いて成虫を入れたらケースと蓋の間にキッチンペーパーを挿んで閉めます。
- 繁殖させる時
- 一日水に浸け、取り出して半日陰干しておいた産卵木をケースへ入れ、少量の水と混ぜたマットを成虫が立ち上がってもケースの縁に手が届かない深さ(大ケースならばケースの深さの半分位)まで入れて、マットの上に餌と造花の葉を置いたら準備完了です。成熟したオオクワのペアをケースに入れ、ケースと蓋の間にキッチンペーパーを挿んで閉めます。
- 越冬させる時
- ペアリングしたまま越冬させる事もできますが、大ケースだと場所を取るので私はミニケースや仕切りつきミニケースに一匹ずつ入れて越冬させています。少量の水と混ぜたマットをケースの深さの半分程入れ、成虫を入れたらケースと蓋の間に小さな穴をいくつか開けたビニール袋を挿んで閉めます。
- 飼育場所
- 日陰で風通しが良く涼しい場所が理想です。直射日光が当る場所や昼間誰も居なく閉めきって高温になる場所は避けましょう。私は最初に玄関で飼育していましたが、飼育ケースには小蝿やダニが居ますのでベランダに追い出されてしまいました。ベランダでは涼しい朝方にしか日が当らない場所にラックを置き、簾を掛けています。
- 給餌
- カブト虫ほど大食いでは無いので週に1〜2回確認して交換すれば大丈夫です。もし餌が残っていても古くなったら交換しましょう。
- 加水
- 餌を交換するときにマットの状態を確認し乾燥していたら水を加えます。霧吹きで水を加える方が多いようですが、私は面倒なのでコップで入れています。
- マットの交換
- マットに小蝿やダニが居たり臭いが気になって、飼主が我慢できなくなったら交換しましょう。ケースにペアを入れていて産卵しているかもしれない時は、産卵木だけでなくマットにも幼虫が居る事がありますから捨ててしまわないように注意しましょう。
- ダニ対策
- マット内にはいろんなダニが居ますが、オオクワの飼育で困ったのは白いダニとピンク色のダニです。白いダニは成虫の関節部などに寄生し、よく動くのですぐ判ります。粘着テープ等で取っても翌週にはまた居るので気にしだすと限がありません。ピンク色のダニは飼育ケースや虫の表面に数十万もびっしり付きこちらは擦り落とさないと取れないので厄介です。完全なダニ対策はありませんが悪質なダニが発生した時は、飼育ケースやマットを新しい物と交換し、成虫の表面についたダニは歯ブラシや粘着テープで取ってから新しい飼育セットに入れてください。元の飼育ケースは洗剤を使って洗浄し、古いマットは必ず廃棄します。
- 越冬
- 涼しくなって餌をあまり食べなくなってきたら越冬の準備をしましょう。飼育ケースに少し多めのマットを入れて、小さな穴をいくつか開けたビニール袋をケースと蓋の間に挿んで乾燥し過ぎないようにしてやれば屋外で越冬できます。越冬用にケースをセットするとマットが多く脱走しやすくなるので、虫が蓋とビニールの間に上がって来たり、蓋のスリットに顎を挟んでいたりする事がありますからセットしてしばらくはこまめにチェックしてください。冬眠中は餌も不要なので虫の事は忘れてしまいがちですが、月に一回はマットの状態を確認し乾燥しているなら水を加えてやります。桜の花が咲く頃から活動を始めますので、汚れたマットやケースを交換し夏用のセットに入れて餌も入れてやります。
- 繁殖
- オオクワは羽化してから繁殖可能な状態に成熟するまで時間がかかります。また成熟していても気温が低いと活動しませんので繁殖させる事はできません。屋外で飼育している我家では、通常7月中旬に羽化した成虫を取り出して翌年まで単独で飼育し、5月下旬頃から産卵セットにペアを入れると7月頃にはケースの壁面や底に幼虫の姿を見ることが出来ます。幼虫を見つけたら成虫を産卵セットから他のケースに移します。そして幼虫の餌の発酵マットを作りましょう。発酵マットの作り方は幼虫の餌の項目に書いています。産卵セットから虫を卵のままで取り出すのを防ぐため、孵化して少し育つまで2〜3週間待ってから産卵木を解して幼虫を取り出します。マットの中にも幼虫が居ますので注意して掘ってみてください。メスは1度交尾をすると、以後は拒むようで、小さな飼育ケースにペアを入れたままにしておくと、オスが執拗に追い掛け回して最後は挟み殺す事もあるようです。
幼虫編
- 飼育用品
- 飼育容器
- 口が広い瓶やペットボトルなどで飼育できます。オオクワは横向きに蛹室を作るので、羽化を無事させるために容器の直径は最低でも10センチ有ったほうが良いでしょう。私は1400mlの背が低いPPボトル(菌糸瓶として買ったポリボトル)を使ってますが、簡単に入手できる物ならお茶の2リットル入りペットボトルで飼育できます。お茶のペットボトルのラベルを剥がし、中央のくびれより少し上をカッターナイフで切って上側を捨てます。下半分にマットと幼虫を入れてキッチンペーパーで蓋をしたらくびれの部分に輪ゴムをかけます。炭酸ジュースのペットボトルは素材が軟らかく使いにくいようです。
- 麺棒
- 100円ショップで買ってきました。マットを飼育容器に詰めるのに使います。
- スプーン
- これも100円ショップで買ってきました。私はステンレス製の柄が長いレンゲを使っています。マットを掘ったりケースから幼虫を取り出すのに使います。
- マット・えさ
- 幼虫の餌は広葉樹ですが、椎茸のホダ木に直接幼虫を入れたり、おが屑にきのこの菌糸を植付けたり、食べさせ方は様々です。ここでは主に空調が不要で材料の入手が簡単なマット飼育について説明します。
- おが屑
- 幼虫が食べるのはクヌギなど広葉樹のおが屑です。椎茸を栽培した後のホダ木を粉砕し、昆虫マットとして売っています。宣伝文句には栄養豊富などと書いてありますが、オオクワの幼虫にそのまま食べさせても大きくはならないようです。ホームセンターやスーパーでは夏の間しか店頭に並ばなかったりしますので、必要な方は買いだめした方が良いかもしれません。送料が掛かってよければ通販でいつでも入手できます。飼育中におが屑が発酵を始めるとケース内が酸欠になり、幼虫が死んでしまう事もありますので注意しましょう。
- 発酵マット
- 広葉樹のおが屑にフスマや小麦粉などを添加して発酵させたものです。発酵済みですので酸欠事故の可能性が減りますし、添加物で栄養が強化されているはずです。添加物に増産フスマを使うと大きく育つようです。標準的な作り方は、6月〜9月の暑い時期に広葉樹のおが屑へ小麦粉などの添加物を5〜10%入れて良く混ぜ、べチャべチャにならないように少な目の水を加えて更に良くかき混ぜ、蓋ができる箱に入れて毎日かき混ぜると一週間ちょっとで完成です。腐って悪臭がしたりアンモニア臭くなったりするので、私は添加物をマットの5%にしています。味の素を入れて発酵させる方法もありますがアンモニア臭くなりやすいようです。発酵が終わってもアンモニア臭がきつい場合は、幼虫が餌を食べませんので失敗です。透明な衣装ケース等を日向において最初の1〜2日高温醗酵させると、おが屑に居るダニ等が死んで快適な飼育が出来ます。
- 菌糸瓶
- 広葉樹のおが屑に添加物を混ぜ、きのこの菌糸を植付けたものです。大きく育つらしく最近は価格も手ごろなので興味がありますが、菌糸が夏の高温に弱いそうでベランダで飼育している私には難しそうです。マットで飼育していた幼虫を何匹か秋に菌糸瓶に入れ替えた事がありますが、大きさは発酵マットで飼育した虫と変わりませんでした。飼育方法にコツが要るようです。
- 殺虫マット
- 袋には「幼虫の飼育に最適」などと書いてあるのに、実際に幼虫を飼育すると餌を食べずに死んでしまうと言われている昆虫マットがあります。商品名は書けませんが赤茶色をしており、他のマットより格安なのが特徴です。どの店でもよく置いてあり、安いのでよく売れているようですがご注意ください。
- 飼育方法
- 入手
- フリーマーケットやインターネットのオークション等では1匹100円〜1000円で売っています。
- ケースのセット
- カブト虫の幼虫は1つのケースで複数飼育が可能ですが、オオクワの幼虫は共食いすることが有るそうなので個別に飼育しましょう。マットで飼育する場合は少量の水を加えたマットを容器に入れ、底から2/3までは麺棒等を使って硬めに詰めます。残りの上側1/3は幼虫が潜り易いようマットは固めません。全部硬く詰めて真中に幼虫が入る穴を開けても良いと思います。幼虫を入れた後は、キッチンペーパーで蓋をして輪ゴムで止めるか、瓶などで蓋があれば小さな穴をいくつか開けて閉めます。
- 飼育場所
- 成虫と同じく日陰で風通しが良く涼しい場所が理想です。直射日光が当る場所や昼間誰も居なく閉めきって高温になる場所は避けましょう。マットから小蝿やダニが発生しますので室内は避けた方が無難です。
- 給餌
- 幼虫が食べるのはケースの下半分のマットなのでケースの外から見て下側に糞が目立ってきたら交換します。寒い時期は幼虫が活動しませんので餌交換は避けましょう。
- 加水
- マットが乾燥したら水を加えます。少し湿らせる程度で良く、ベチャベチャにしないよう気をつけましょう。羽化する頃は少し乾燥しているくらいがちょうど良いようです。
- ダニ対策
- マット内で木を食べるダニを見る事は多いですが、オオクワの幼虫を飼育していてダニで困った事は未だ無いのでよく判りません。
- 蛹化・羽化
- 朽木ハエなどが繁殖しマットが劣化していると少しの振動で蛹室が壊れてしまうので、私は桜の花が咲く頃に最後のマット交換をしています。5月下旬から幼虫は黄色っぽくなり、ケースの底に蛹室を作り始めますので、ケースを動かしたりマットを掘ったりしないようにしましょう。6月下旬頃から羽化を始めます。オオクワはオスよりもメスが先に羽化する傾向があるようです。羽化した後も体がよく固まっていませんので最低でも2週間は取り出さないようにしましょう。蛹室から取り出してもしばらくは餌を食べませんが、私は一応ケースに餌を入れておきます。
飼育のポイント編
- 成虫を長生きさせるには
- 死亡原因と対策
- 不適切な飼育ケース---虫かごは使わず、保湿するためにおが屑等を入れましょう。
- 夏の暑さと蒸れ---飼育場所をよく検討しましょう。
- 夏の乾燥---週に何度か様子を見て加水しましょう。
- 横転---枯れ葉や造花等掴まる物を入れ、週に何度か様子を見ましょう。
- 顎挟み---飼育ケースのスリットを挟んで取れなくなりますので、週に何度か様子を見ましょう。マットの入れすぎが原因です。
- 餌切れ---週に1度は交換しましょう。
- 冬の乾燥---穴開きビニールを使って保湿し、月に1回は様子を見ましょう。
- 病気---冬に白いかびが生えて死んでしまう事があります。対策は無いようですが、マットを廃棄するなど他の虫に感染しないように注意しましょう。
- 単独飼育
- 同一ケースで複数飼育すると喧嘩してしまいますし、オスとメスでペアリングしても体力を消耗してしまいます。長生きさせたければケースに1匹でペアリングせずに飼育します。
- 大きく育てるには
- 産卵時期
- 出来るだけ早く幼虫を得て、暑い夏にしっかり餌を食べさせた方が良いようです。親虫は空調無しだと5月頃から餌を活発に食べますので、5月下旬までにはペアリングします。
- 幼虫の飼育ケース
- 幼虫はどちらかと言うと容器の底に近いところに居て餌を食べますので、縦長の容器は無駄になりそうですし、マットの交換にも不便です。またあまり小さい容器だと交換する前に餌を食べ尽くしてしまいます。底面積がある1.4〜2リットルの容器が使いやすいと思います。私は1.4リットルのPPボトルを使ってます。
- 幼虫の餌の準備
-
クワガタ狂の大馬鹿者達で知ったのですが、マットを醗酵させる時にフスマを添加すると大きく育ち易いようです。フスマは農協へ行くと安く入手できますが、10キロと量が多いのが難点です。私は食料品店で500グラム単位で売っている全粒粉でも70mmが出てます。醗酵マットは新鮮なのが良いそうですが、ヒーターを使わずに醗酵できるのは6月〜9月頃ですから、いつでも簡単に準備は出来ませんので、私は夏に醗酵させたマットを厚手の黒いビニール袋に密封して保管してます。カビが生えたり、嫌気醗酵したような臭いがする事もありますが、使う前にケースへ広げて水を加え、2〜3日空気に曝してから使えば大丈夫だと思います。
- 幼虫の餌交換
- 屋外で飼育している私の場合は、5月下旬にペアリングしたならば、8月上旬に幼虫を取り出して個別飼育を始め、9月中旬に1回目の餌交換、11月上旬に2回目の餌交換、翌年4月上旬に3回目の餌交換をしています。
- 最後に
- ここに書いているのは山口県で屋外飼育をした時の飼育日誌を参考に、私なりの飼育方法をまとめた物です。飼育条件によっては、産卵して羽化するまでに2年かかる等書いてある通りにならない事も多いですから、十分観察されて飼育される事をお薦めします。
2003.7.14 Ver1
2003.7.15 Ver1.1 幼虫の飼育容器とケースのセットを修正
2003.8.11 Ver1.2 幼虫の飼育用品に麺棒とスプーンを追加
2005.7.23 Ver1.3 幼虫の飼育容器をPPボトルへ変更
2005.7.24 Ver1.4 成虫の繁殖について加筆
2005.7.30 Ver2 飼育のポイント編を追加